織絵屋のブログ
05/09: 分かっている方が選ぶ「麻の着物」
織絵屋の松山です。今回は、麻(あさ)の着物について述べます。
大和言葉では、「あ」は全ての始まり、「さ」は田の神を意味し、初めて栽培した植物が麻だったのです。
古来、日本人の着物は麻素材でした。主な麻は大麻(たいま)と苧麻(ちょま)でした。
大麻は、日本人が縄文時代から着ていた着物の原点と言えます。大麻は、とにかく丈夫で実用的でしたので、庶民に木綿が普及する江戸時代まで、着物と言えば大麻でした。

しかし、戦後、GHQによる米国製の化学繊維を広めるための政策もあり、日本では大麻を自由に栽培することができなくなりました。
苧麻は、弥生時代から使われ、美しく進化した麻と言われています。繊維が細くてなめらかで、光沢があるので上品で、見た目にも「きちんと感」が出ます。

小千谷縮みや近江縮みなどの一般的な麻の着物は、苧麻から機械紡績したラミー糸で織られたものですが、洋服に使われる亜麻(リネン)に比べ、肌に触れた瞬間の涼しさが違います。
年齢を重ねると、涼しいだけでは物足りなくなるはずです。だからこそ、涼しさに品を足した苧麻の着物が似合ってくるんです。
03/31: そのきもの、眠らせるには惜しい絹です
織絵屋の松山です。今回は染め替えについて述べます!
絹のきものは、他の素材と違って染めやすいという特性があり、染め替えもスムーズに出来ます。
染め替えと言っても、様々な方法があります。
色無地を染め替える方法は、きものを洗い張り(解いて、端縫いして水で洗う)してから脱色して、別な色に染めます。好きな色に染められる利点があります。
脱色しないで、別な色に染める方法もあります。重ね染と言いますが、今の色の上から別な色を重ねるように染める方法です。深みのある色になる利点があります。ただ、今より薄い色には染まりません。
訪問着や付け下げ、小紋などは、元柄を活かす染め替えになります。
今の地色と違う色を全体に重ねて染める方法があります。地色だけでなく、柄も色が変わるので、シックな感じになります。
元柄をそのまま残して、地色だけを重ね染めすることも出来ます。柄の周りまで暈かすように染める方法と柄を糊で伏せてから染める方法があります。

ビフォアー

アフター
紬やお召の織のきものも全体に色を掛けて、シックにしたり、シミを目立たなくすることが出来ます。
絹のきものは、眠らせておくにはもったいないです。新しいきものに生まれ変わるのです。
02/28: 金彩友禅と和田光正氏について
織絵屋の松山です。今回は金彩友禅について述べます。
金彩友禅とは、友禅染のきものに金銀などの箔や粉、泥を用いて、友禅染をより一層華やかにするための伝統的な染技法です。
金彩は元々、友禅染の工程で生じた小さなミスや汚れを隠すために使われた技法です。
しかし、職人たちの努力によって多くの金彩技法が生み出され、友禅染をより美しくする加飾として、その価値が高まりました。
桃山時代には、小袖に摺箔や振り落とし砂子などの金彩技術だけで文様を表現していましたが、その後は、江戸幕府の奢侈禁止令などもあり、近年まで友禅染の最終工程である「お化粧係」としての脇役でした。
ところが、現代では独自の技法と組み合わせで、様々な光彩のバリエーションが生まれ、現代の感性にマッチした文様や色彩のきものが作られています。

画像:光映工芸株式会社
和田光正氏は、金彩友禅の接着剤の欠点を、10年もの間、寝食を忘れて技術改良して克服しました。
その後、150色以上の金銀箔、粉を用いた独自の、新しい金彩技法を開発し、「金彩友禅」という名称を定着させた功績で現代の名工(卓越技術者)にも選ばれました。
また、能衣装や横綱千代の富士、貴乃花などの金彩友禅の化粧廻しなどを製作するなど、金彩友禅の普及に貢献しました。
01/30: 絹素材の「きもの」の魅力について
織絵屋の松山です。今回、「きもの」の素材としての絹の魅力についてのべます。
絹は三千年以上前に、中国で生まれ、シルクロードを渡りヨーロッパにも伝わり、それまで麻とウールしか知らなかった人々はその光沢やつや、柔らかい風合いに驚き、絹を金と同じ重さ買い求めたそうです。
絹は蚕から作られますが、「蚕」は天から人間が授かった宝物です。繭から採れる糸は1200mにもなります。一枚のきものにはおよそ2,600個の繭が必要です。とても細くて超長い繊維だから、あの絹の独特のツヤや光沢、柔らかな肌触りが生まれるのです。

ほぼ、毎日着物を着る私が感じていることですが、木綿や麻は丈夫でお手入れが簡単なので使い勝手は抜群です。でも、着た時にテンションが上がることはありません。
しかし、絹素材のきものは、ちりめんでも、お召でも、紬でもそうですが、袖を通した瞬間にテンションが上がります。体も心も喜ぶ感じがします。
絹はデリケートなので、扱いには気を使いますが、吸湿性、放湿性に優れ、また静電気も起きにくく、さらに紫外線をカットしてくれます。
「きもの」はそんな最高の素材に、工芸的な染めや織りを施しているから体も心も喜び、着る人を元気にしてくれるのだと思います。
12/27: 幻の染と呼ばれる『竹かご染』
織絵屋の松山です。染色技法には様々な種類がありますが、今回は「竹かご染」について述べます。「竹かご染」は「かご絞り染」とも呼ばれています。
この技法は、格子状に編んだ四角のカゴに、白生地を詰めて染め、独特のぼかしや不規則な模様を生み出す伝統的な染色技法です。
まず、カゴに白生地をくしゃくしゃにして詰めるのですが、職人の指の感触だけで均等に詰めます。
次に、詰めた白生地の上からジョウロで染料をかけ、一気に染めず、徐々に染料を染み込ませていきます。

その後、生地を詰め直しながら染色を繰り返します。
すると、竹かごに当たる部分と当たらない部分で、色の抜け方が異なるので絶妙なムラ(グラデーション)が生まれます。同じ柄は2点とないのが特徴です。
さらに、染まった生地の上から別な色で25回も繰り返し染め、万華鏡のような柄になるモノもあります。
ただ、現在では「竹かご染」ができる職人は極めて少なく、めったに見られない幻の染と呼ばれています。
